下げ札は品質を表示しブランドイメージをアピールする

様々な下げ札

下げ札の基本的役割は「商品名やブランド名の表示」です。しかし、ひとつの商品に下げ札が付いているということが物語ることは意外と多く、商品の高級感を演出したり、付加価値を示していたりと、そのはたらきには軽く見るわけにはいかないところがかなりあるのです。

必要な情報をコンパクトにわかりやすく伝える下げ札

ティーパックの持ち手に書かれたメッセージ

「下げ札」を付けている商品として目立つのはやはり繊維製品ですが、実はどのような情報を下げ札に表示しなければならないか、法律でかなり細かく定められています。

1.混用率

素材となっている繊維の種類ごとの比率を明示することになっています。「綿100%」、「羊毛50% カシミア50%」などといった形で、百分率(%)で表示します。このような表示のしかたを「全体表示」といいます。製品全体の中での繊維比率を示しているからです。

もうひとつ、「分離表示」という形がとられることもあります。製品の部位ごとに分けて組成繊維を表示する方式です。あまり厳密な規定はありませんが、わかりやすく表示することが求められています。たとえば、「たて糸 綿100% よこ糸 レーヨン100%」、「地糸 ポリエステル100%、柄糸 レーヨン100%」などといった形です。

皮革と組み合わせた製品では、「牛革」、「やぎ革」など皮の種類も表示します。

2.家庭洗濯等取扱方法

家庭で洗濯や漂白、乾燥、アイロンがけをおこなうにあたっての注意事項を、JIS規格で決まった記号をつかって表示します。現行の最新版は2012年に改訂されたものです。

これは身ごろの内側に縫いつけられた布製の「縫い付けラベル」に表示されることがほとんどです。「容易に取れない方法で繊維製品に取り付けなければならない」と定められているからです。

取り扱い方法をあらわす記号は、洗濯、漂白、タンブル乾燥、自然乾燥、アイロン仕上げ、ドライクリーニング、ウエットクリーニングの順番でならべます。いずれかの取り扱いができないケースでは、その扱いをあらわす記号に「×」を付けて載せます。

3.はっ水性

水をはじきやすい性質を「はっ水性(撥水性)」と言います。レインコートなど製品によっては重要な性質ですので、表示することができます。

JIS規格で定められた「繊維製品の防水性試験方法」にもとづく試験をおこない、規定された水準以上のはっ水性が認められたときに「はっ水(水をはじきやすい)」などといった表示が可能になります。洗濯などによりはっ水性が失われる製品の場合は、「水洗い後は撥水効果がなくなります」などその旨を付記する必要があります。

4.表示者名・連絡先

当然のことながら、以上のような情報を表示するメーカー名、ブランド名とその連絡先は表示するよう義務づけられています。会社名、住所、電話番号は最低でも記載します。混用率と洗濯等取扱方法が下げ札と縫い付けラベルに分けて表示されている場合は、その両方に記載します。

このように、下げ札は法律の定めにしたがって消費者に必要な情報をわかりやすくコンパクトに伝える役割をになっています。

ブランドイメージ・商品価値をあげる下げ札・タグ

植物に下げ札

洋服や雑貨など、商品を購入した時に必ずついている下げ札の役割は、必要な情報の記載だけではありません。下げ札にはかならずブランドロゴや社名なども書かれています。

衣服などに糸で結びつけてあるものは、そのままで着て歩くわけにはいかないので外します。そのまま簡単に捨ててしまいがちなものですが、中には捨てずにとっておきたいと思わせるものもあります。かわいいデザインやザラザラした紙の質感、箔押しの加工が凝っていて高級感がただよっているものなどはなんだか捨てるのがもったいない気がします。そして実際、衣服や雑貨を買ったとき、下げ札を捨てずにとっておいてコレクションにしている方はけっこういらっしゃるのです。

ブランドイメージをアピールすることも、下げ札の大きな役割です。オシャレであったり、かわいかったり、高級感のあるものだったり、それぞれの商品にふさわしいイメージでデザインされた下げ札は、アピールするブランドイメージの力で消費者を強く引きつけ、商品の価値を高めます。下げ札は商品の付加価値の一つと言っても過言ではありません。箔押しや特殊印刷などの凝った加工をほどこした下げ札を商品に付ければ、その商品の価値はより一層引き立つことでしょう。

下げ札はブランドの「らしさ」をあらわす

下げ札にメッセージ

商品にひも付けされている下げ札。その紙がつるつるのろう引きではなく、オシャレな感じのざらざらしたマット紙であったり、ひもがチェーンであったりと、細かいところまで凝っていると、細かいところまで手を抜かないブランドのこだわりを感じます。そういうブランドなら、きっと信念と自信を持って商品をリリースしているだろうと思えます。その商品を購入する安心感にもつながります。

そういった安心感をかもし出すためには、下げ札のデザインが商品とマッチしている必要があります。たとえば高機能防水透湿素材をつかったアウトドアウェアの下げ札なのに、安っぽいペラペラの紙質で大した説明も書いていないとしたら、いくら製品としてすぐれていても伝わりません。防水透湿素材といえば代表的な製品としてGore-Texがありますが、これに関しては製造・供給元のGore-Texが独自の下げ札を提供しており、製品のメリットや特徴をわかりやすく示しています。こういう場合には製造・供給元の下げ札に負けないくらいのグレード感を持たせた下げ札を用意すべきです。

また、ナチュラルな風合いの天然素材でできた服の下げ札が無機的なオフセット印刷のつるつるろう引き紙だったら、やはり違和感があるでしょう。購買意欲がそがれます。この場合は草木をかたどったロゴをあしらうなど、「自然」をアピールしたデザインをくふうすべきです。

下げ札は、その商品の「らしさ」と一貫していなければなりません。下げ札のデザインは、商品に似つかわしく、ふさわしいものでなければならないのです。

ひとつのメーカーから異なったコンセプトの商品をリリースするには

メッセージの書かれた下げ札

下げ札と商品のデザインやイメージは一貫していなければなりませんが、では、おなじひとつの会社・メーカーから、これまでとはまったく異なる路線の商品を展開しようとするときにはどうしたらいいのでしょう。

たとえば、30代後半くらいからの女性向けに、やや落ち着いた高級寄りの衣服を提供してきたメーカーが、ハイティーンの女子をターゲットとした商品を手がける新展開を考えるような場合です。

この場合、それまで使っていた高級寄りの下げ札を、そのままハイティーン向けの商品に使うわけにはいきません。商品イメージ、「らしさ」が一貫しておらず、似つかわしくないからです。

実際のところ、このような新規展開を考え、実行したという話は中堅どころより大きくなったアパレルメーカーではよくある話です。では、そういったメーカーではどうしたかというと、新しいブランドを立ち上げているのです。上の例で言うと、従来のレディー向けブランドとは別個に、10代の女の子に受けそうなブランドネームを付けた新ブランドを立ち上げます。そのうえで、それにふさわしい形の、ポップ感やカワイイ感のあるロゴをデザインし、下げ札に作り込んでいくのです。

新ブランド立ち上げとなると事業部門を新たに立ち上げることになるので大変です。新しい下げ札のデザインも、いわば「商品の名刺」を新しく作ることですから、気を抜くわけにはいかないでしょう。